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「並行思考」
こんな表現の仕方があるのか無いのかは知らないが、おいらは何か思考する時に用いるやり方だ。
この世で起こる物事は見た目や用途が全く違うのに、実は本質が全く同じと言う事が数多く存在している。
以前にも述べたが「二重ガラスの逆原理」をエンジンオイル添加剤EGAやエンジンオイルに利用したり、CPOを生み出した原点はローラーコンベアーだったりと皆並行思考の産物だ。
別に目的なんて面倒くさい事を考えず漠然と物事や現存するものの原点を探って行くと面白いモノがいくらでもある。
中学生になったばかりの頃、向かい風を受けホバーリングして獲物を探す鷹が、獲物を見つけた瞬間、翼を半分たたみ一直線に獲物に向かい、獲物を捕獲する一瞬手前で翼を広げブレーキをかける様を見ていた。
エンジン飛行機に夢中だった頃の話だ。
Uコン(エンジン飛行機)のスタント演技でウイングオーバー(垂直上昇)と言うものがある。
スタント演技の基本でとても重要なものである。
Uコンにはエアーブレーキやエンジンの回転をコントロールするものは装備していない。
ウイングオーバーとは水平飛行から急激に方向を垂直に向け上昇するのだが、中々見た目の姿勢変更が90度にならない。その頃頭の中はウイングオーバー一色だった。
ここで鷹の一連の動きが、その後のウイングオーバーや角宙返りに大きな影響を与えてくれた。
特に参考となったのは鷹の翼の形状と獲物を捕らえる瞬間のブレーキだ。
そして特殊な形状の主翼(リブ型)を生み出す切っ掛けとなった。今昔話で書いた「翼を通過する空気が見える」と表現した経緯の裏には鷹の存在があったのである。
隔離板付き燃料タンクを創った切っ掛けは中学の社会で学んだ石油タンカーの内部構造だ。
燃料にも一工夫した。
引火点を変えてトルクフルな燃料を創った。
そしてこれらの工夫の積み重ねが当時誰も真似が出来ないウイングオーバーの90度上昇を可能にした。
Uコンを飛ばして一休み中、模型エンジンのことを話していると、必ず「模型のエンジンだから」とか「本物のエンジンとは違うから」とおっしゃる方がいる。
とても不思議だ。
勿論、模型のエンジンもバイクなどの本物と称されるエンジンも基本的には同じである。
おいらのところに出入りしているヤツでラジコンカーに嵌っているヤツのエンジンをチューニング指導してみた。
対象エンジンはラジコンカーのレースで絶対に使われることの無い性能的に一番下にランクされるエンジンである。
もし模型のエンジンだからとか本物のエンジンとは違うからと言う事が本当なら、おいらのチューニング理論は模型のエンジンには通用しないはずである。
そしておいらの指導の下にヤツがヤスリとリューターを使いチューニングを施した。
ベテラン達でさえビックリする速さだ。
市販チューニングエンジン並みかそれ以上の速さにヤツは大満足だ。
そこでおいらはヤツにこの速さは未だ60%程度のチューニングだよって言ったら目を真ん丸くして沈黙してしまった。
乞うご期待である。
これらは並行思考が生み出す産物であることに気付かれたと思う。
成功例を基に全く違うモノへの利用や活用は失敗することの確率を限りなく少なくしてくれるのだ。
失敗例もおいらは見逃さない。
失敗も用途が違えば成功につながる可能性があるからだ。