HOME » 油職人今昔話
記憶が正確か否かは定かでないが、おいらがバイクに乗り始めた頃、サスオイルってサスペンションオイルではなくサスペンションフルードって呼ばれていた。
当時、フルードとオイルの区別はどのようにしているのか良く判らなかった。
オートマチックミッションに入れる潤滑作動油はATFと略されているようにフルードだ。ブレーキ液もフルードと言われている。
おいらが初めてサスオイルを交換したのは高校の時乗っていたホンダCB72である。当時サスオイルを交換なんてするヤツなんていなかった。少なくともおいらの周りにはいなかった。
何でサスオイルを交換したかってぇのはCB72のフロントフォークのボトムケースにドレンプラグが付いていたことと、単純だがオイルが入っているなら劣化するので交換しなきゃいけねぇと思った。
交換するのはいいがどんなオイルを入れればいいのか判らなかった。
親父の知り合いのバイク屋に行ってアドバイスを受けた。バイク屋はおいらに
「物好きだなぁ、フォークオイルなんざぁ交換するヤツは滅多にいないよ」
って言われたが、何のオイルに交換すればいいかを教えてくれた。
「ミシン油だよ、自転車油や機械油とも言われているヤツを使えばいいんだよ」
って教えてくれた。
バイクに乗る前は自転車に乗っていたんで自転車油は持っていた。サービスマニュアルなんざ持っていない。そんなものが有るってぇことすら知らなかった。
交換作業に入ったが全てが初めてだ。キャップボルトを緩めた。片方ずつ慎重に緩めた。完全に外す前にドレンプラグを外しサスオイルをメスシリンダーの中に抜いた。
何故メスシリンダーに抜いたかと言うとオイル量を知りたかったからだ。両方のオイルを抜いて量を量ったが若干違いがあったので平均した。
抜いたオイルは真っ黒で、状態を表現するなら黒い水のような感じだった。必要量を両フォークに入れキャップボルトを締めて終了だ。
早速試乗だ。全く違うバイクのようだった。今考えると大したことではなかったかもしれないが、当時はこんなに変わるのかとビックリした。
未だにフォークオイルにこだわるのは、この当時の経験があったからかもしれない。
その後、サス専用のオイルが発売された。
粘度表示は無かった。
当時、オイル類で粘度表示があったのはエンジンオイルだけだったと記憶してる。
身近なオイルで粘度表示が未だに無いのは2ストオイル、2ストミッションオイル、四輪のオートマチックフルードなどかな?
おいらの創るサスペンションオイルは粘度表示をしていない。オイル粘度で緩衝をコントロールするのではなく、油面で緩衝をコントロールするからだ。
又、オイル粘度で悩んだりすることなく、サスオイル交換作業をされる方々の作業効率を上げるためでもある。
油面で緩衝をコントロールすれば正確なデータを得ることが出来る。油面調整が当たり前の現在でも油量でサスオイル交換をされている方がいる。
サスを完全オーバーホールしない限り、サスの中に20ml〜50ml程度残っているのでオイル量を正確に交換出来ない。
更に言うならプラ製のメスシリンダーはご存知のように大気温度や使用劣化などで正確な量(多めに計量される)を量ることが出来ない。
メスシリンダーを購入された時に同梱されている注意書きに不正確であることが記載されている。
量で交換されている方はサスが固くなった経験をされているはずだが、上述したことがその理由である。おいらの体験例として250mlのメスシリンダーで250mlを計量して、JIS規格のガラス製メスシリンダーで再計量したら300ml弱であった。
とにかく量でのサスオイル交換ではなく油面でやられることをお薦めする。
どうしても量でと言うのであれば上述したことにご注意あれ。